2013.02.04
一握りのもの
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一つの事を成す為に、
どれだけの時間を
費やしているのだろう
なんどでも足を運び
その世界を知り
語ることはない
見せることはない
知識と経験の蓄積を
重ねて
広げて
出来あがった
一握りの写真
一握りの言葉
一握りの伝統
それに皆が感動する
「なんて たのしい おしごとなのだ」
・・・・・
第四回キッチンミノル写真展
「春風亭一之輔」
2月2日(土)~2月4日(月)
12:00~20:00(最終日19時)
2012年2月29日、
東京に大雪が降った。
この日、キッチンミノルさんが撮った一枚の家族の写真に「やられた!」と思った。
私と二人三脚でドキュメンタリーに取り組んでいるのに、
とてつもない写真を撮ってしまったのだ。
たった一枚でひとりの落語家の暮らしぶりと心底とを写した。
しかも撮影している彼まで、見えないが確かにそこにいる。
この衝撃をぜひ会場で追体験していただきたい。
「落語とドキュメンタリー」
「AERA」2012年4月30日号の「現代の肖像」で、
写真家キッチンミノルさんと二人で生涯忘れ得ぬ体験をした。
なにしろ飛ぶ鳥落とす勢いの人気と実力で話題となっていた俊英の二ツ目の、
真打になる瞬間までの日々をドキュメントさせてもらったのだ。
もちろん取材はいつだって一期一会。
だが将来大看板になること必至の若手落語家の「大初日」の前後に
立ち会えたのである。
しかも家族も含めてだ。
こんな僥倖はない。
とんでもないほど強靭な落語の力と生きのよさを身体にもっている
落語家であることはみなさんとっくに承知だろう。
しかしそれを支えていたのは、いたって質素でごく真っ当な暮らしぶりだった。
私たちはその貴重な目撃者となったのだ。
雪のなかを保育園に向かう宝のような子どもたちの息づかいや声。
妻が磨き上げた使い古しの鍋の山。
散らかった居間の温かな匂い・・。
まさにドキュメンタリーの役得だ。
こんなまるごとの一之輔を見ることができたのは私たちだけなのだ、
と二人で快哉を叫んだ。
この写真展は、この天恵のおすそ分けである。
(古典芸能エッセイスト 守田梢路)
*会場では、CDや書籍の他、
春風亭一之輔の写真を期間限定販売致します。