2012.01.30
展示をするということ
[ フラスコのこと ]
浄法寺の漆は国産漆の最後の砦と言っても過言ではありません。
日本国内で消費されている漆の約96%が中国産漆で、
国産漆生産量は年々減少を続けています。
縄文時代早期(約10,000年前)からの長い歴史を持つ国内の漆生産の歴史も、
残念なことに漆需要の低迷や職人数の減少、高齢化により"風前の灯"となっています。
それは、自然由来の優れた資源である漆の魅力がまだまだ知られていないことが
一因だと思います。 しかし、残された時間は僅か。浄法寺の漆掻き職人がまだ
職人集団として残っている今こそ、対策を講じなければなりません。
こんなに魅力的な素材を放っておいていいものだろうかと、私は漆文化の継承と
漆産業の振興を願い、起業しました。
地元・岩手という豊かなフィールドに生まれ育ち、漆というクリエイティブな素材に
出会えたことを感謝します。
平成21年4月1日 起業の日
浄法寺漆産業 代表 松沢 卓生
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展示をするという事は、ただ物を売るという事だけではありません。
物に対する作り手の思いや考えを、しっかり受け止め、
理解してそれをどう伝えるか。
その伝え方も人それぞれであり、方法も違います。
どれだけ伝わるのかは、その空間に入った時に分かります。
いや、入る前から何か伝わる空気があります。
(なんというか、漂う空気が違うので引き寄せられてしまう感じ)
ただ物を並べているだけでは伝わりません。
ただイベントをしているだけでは伝わりません。
全ては、
「その物の良さを伝えたい」
「伝えるためにどうするか」
その強さの中にある
「気軽さ」
のバランスだと思います。
あまりに思いを強く押し付けられてしまうと引いてしまいます。
ただ物が並んでいるだけでは展覧会になってしまいます。
良い物が価格の高い物が、何故その価格なのか、
その価格でも長く使う事で、どんな喜びを想像させてくれるのか。
よい展示には気持ちを高揚させてくれる物語が詰まっています。
そんな「空気」が漂っています。
今回の
Jokogumoの『使ってみたい、漆展』は
・フラスコ入り口に漆の木が立っていてビックリします。
・そこで漆掻きの実演をしていて、皆真剣に見て聞いています。(土日)
・中に入ると器の出来る工程が良く分かるように並んでいます。
・5年間使用した漆の器が、想像を膨らませてくれます。
・展示品は色々な人が作った漆の器がバランスよく並んでいて選ぶ楽しみがあります。
・漆の器と一緒に地元でしかなかなか手に入らない特産品が並んでいて一緒に買いたくなります。
・キッチンでは郷土料理が良い匂いをさせています。
・畳では一つのテーブルで料理、地酒を楽しみ、他の人とついつい会話をしてしまいます。
・同じテーブル端で金継ぎ修理の相談や漆塗りをしていて料理やお酒と一緒に楽しんでいます。
これは、jokogumoの小池さんの想い描く世界でした。
フラスコの15坪の空間にこれだけの世界を作りました。
漆産業の事を理解し職人の思いを知り、本当に漆が好きだからこそ出来る事なのです。
フラスコ冥利につきます。
その手助けが出来ていることに喜びを感じています。
あまりにもこの展示が良いとの評判で、わざわざ見に来る人がいます。
そして全てはこの言葉がこの展示の良さを語っていると思います。
浄法寺から来ている職人が言った言葉
「勇気をもらいました」
Jokogumoの『使ってみたい、漆展』
2月1日(水)17時まで